最近のベトナム人技能実習生、ベトナム人私費留学生をめぐる様々な報道等への雑感

 Anh Sao Co.,ltd(アンサオ)/のぞみ日本語センターです。ベトナムの首都ハノイベトナム北部で翻訳・通訳、コンサルティング・リサーチ、教育・研修等のサービスをご提供しています。

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。よろしくお願いいたします。

最近のベトナム人技能実習生、ベトナム人私費留学生をめぐる様々な報道等への雑感

 最近、日本にいらっしゃる方々の間で身近にいるベトナム人私費留学生やベトナム人技能実習生のことが話題にのぼることが増えてきているようです。その一方で、一昨年、昨年、今年と、テレビや新聞、SNSなどで、ベトナム人私費留学生やベトナム人技能実習生が引き起こした事件が報じられる件数が増加しているのではないかと思われます。ベトナム人私費留学生やベトナム人技能実習生ではありませんが、今年(2017年)は、非常に残念なことに、来日されて日本に在住されているベトナム人のご家族の小さいお子さんが殺害されるという痛ましい事件も起きてしまいました。

 10年前にはほとんど考えられなかったことですが、特に最近数年間、日本に滞在、在住しているベトナム人、特に日本各地に滞在、在住するベトナム人私費留学生とベトナム人技能実習生が急増してきていることで、それまでベトナムベトナム人とまるで縁がなかった人たちの間でもベトナムベトナム人の存在感が増しているのではないかと思っているのですが、当エントリーをお読みいただいているみなさまは、いかがお感じですか。

1. 2017年12月12日に放映された「ガイアの夜明け」について

 2週間ほど前(2017年12月12日)にテレビ東京系の「ガイアの夜明け」という番組で、外国人技能実習生の問題が取り上げられ、多くの方々の話題になったようです。

 テレビ東京のウェブサイトでその番組の内容を紹介しているようで、今日(2017年12月26日)確認したかぎりでは下記URLで放映された番組も視聴できるようです。ご覧になっていない方々は下記ページをご覧になってください。

http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber4/preview_20171212.html
"絶望職場"を今こそ変える!

 当社/当センターのほうでも番組を視聴したもので、重要なのではないかと思ったことや気になったことを数点挙げてみます(大変すみません、当社/当センターが重要だと思った点、気になった点を中心にまとめたものであり、詳細に関しては放映された番組の録画をお確かめいただければ幸いです)。

 番組の前半では、日本の受け入れ監理団体とベトナムでの送り出し機関を取り上げています。取り上げているのですが、番組で取り上げられている日本の某受け入れ監理団体とベトナムの某送り出し機関の半ば以上PR、宣伝になってしまっているのではないかと思わないでもありませんでした。番組では比較的良心的に監理事業をしていると取り上げられていた日本の受け入れ監理団体とベトナムでの送り出し機関が話し合いを行い、送り出し機関が実習生から取得する費用を500USD下げるという回答をしたらしき場面が放映されたようなのですが、その送り出し機関ではベトナム人技能実習生からいくらぐらい取得していたのかははっきりと示されなかったようです(大変すみません、もしかしたら見落としているだけかもしれません、お気づきになった方々がいらっしゃいましたら、ご指摘いただければ幸いです)。番組では日本の監理団体によるベトナム人実習生への調査でベトナムで7000USD前後の手数料等の諸経費を支払っていると回答しているところが映し出されていたようですが、もしその同じ番組に登場していたベトナムの某送り出し機関がその技能実習生を送り出しているのであれば、番組で大々的に取り上げたほど良心的、模範的にやっているところというわけでもないかもしれません。

 ベトナムの送り出し機関が日本の受け入れ監理団体を接待している実態や日本の受け入れ監理団体がベトナムの送り出し機関にコミッションを要求しているという証言も放映されていました。当社/当センターは技能実習業界関係の業務を行っておらず(正確に申し上げますと、将来の事業として、介護職の技能実習生への日本語教育と関連サポートには関心、興味を持っているのですが、プロジェクト等はスタートしていません)、実際にそのようなことが行われているのかということに関して十分に状況把握しているとは言いかねるのですが、ベトナムハノイ市で比較的良心的に事業を行っている(らしき?)送り出し機関の関係者の方(々)に照会したところ、放送されたことに該当するようなことはある、という内容のコメントをいただきました。

 番組の後半では、岐阜県にあるアパレル企業の孫請け会社で実習をしていた中国人技能実習生が賃金未払いで苦しめられている状況が取り上げられていました。当社/当センターのほうでもそのような違法行為を行う企業や関係者が存在していると思わず驚いてしまいましたし、番組を視聴された多くの方々の間で話題を呼んだのもわかるような衝撃的な内容ではないかと思いました。
 当社/当センターは関連する法律、法令に関して詳しくないのですが、現時点の当社/当センターの見解は、番組で取り上げられていた縫製企業は違法行為を行っていたのではないか、その孫請け企業に仕事を発注していた発注元の某アパレル企業にも責任があるのではないか、と考えています。大変すみません、詳しいことを十分把握していないのですが、もし仮に番組に登場していた孫請け企業の社長、発注元企業、孫請け企業の弁護士の主張が間違いではなく現行の法律には違反していない、ということでしたら、現行の技能実習制度の法律、法令そのものの欠陥(の一部)が露呈したのではないか、とも思います。

2. 「ガイアの夜明け」で取り上げられていなかったこととは?

 実は、先日の「ガイアの夜明け」では取り上げられなかったようですが、日本で操業する大手自動車会社の孫請け会社、曾孫受け会社や野菜や果樹の農園主や農家、干物加工業者や牡蠣業者のような水産業者、コンビニエンストアのおにぎり工場や弁当工場などでも外国人実習生は「実習」(実質はほぼ「労働」?)しているようです。

 技能実習業界関係者の方々や技能実習生が身近にいらっしゃる方々はよくご存知かと思われるのですが、技能実習生の実習は名目上は「実習」ですが、実習生受け入れ先企業や農家では労働力として使われているところがほとんどのようで、実習生は建前は「実習」であるもののその実態はほぼ「労働」、大半は「単純労働」に従事しているようです。しかしながら、厚生労働省法務省は外国人実習生は「実習」を行っているのだという建前的な見解、見方を固持しているようです。

 現在の技能実習生の「実習」を「労働」と位置付けるかどうかということに関しては、議論のあるところかと思われ、現状に合わせて「労働」であることを認め、そのことを出発点に制度そのものを変更すること、制度を一新することが必要ではないかいう議論も行われているようです。

 現在の技能実習生の「実習」を「労働」と位置付けるかどうかは議論のあるところかと思われるのですが、現行の制度でも技能実習生に対しては安全の講習等が義務づけられており、技能実習生の労働時間に応じて日本の各地域の最低賃金最低賃金を超える賃金が支払われることになっています。

 そのようなことからすれば、「ガイアの夜明け」で取り上げられていた中国人実習生を雇用していたにもかかわらず最低賃金も支払っていなかった縫製企業は、現行の法律、現行の技能実習制度の目的とすることからしても、明白な違法行為を行っていたのではないでしょうか。どうして大々的な事件にならないのか、当社/当センターのほうではわかりかねています。

3. ローソンの社長が「コンビニエンスストアの運営業務に外国人技能実習生を」と主張

 コンビニエンスストア大手のローソン社長の竹増貞信氏は、外国人技能実習制度の対象職種にコンビニ運営業務を追加するべきであるということを主張されているようで、昨日(2017年12月25日)の朝日新聞に記事が掲載されたようです。

https://www.asahi.com/articles/ASKDQ5V5JKDQULFA02P.html
ローソン社長「外国人技能実習は必要。コンビニ追加を」

 もし仮にローソンの社長の主張していることが実現されるようになった場合、コンビニエンスストア業界関係者にとっては、既存のビジネスモデルを大きく変えることがなく多人数の外国人労働者を「実習」という名目で活用できるという可能性があるように思われるので、コンビニエンスストア業界関係者にとっては大きなメリットがあるのかもしれません。

 多くの方々がご存知のようにコンビニエンスストアでは実はすでに相当の人数の外国人が運営業務、接客業務を行っているのですが、その大半は私費留学生のようです。ご存知の方々も少なくないのではないかと思っていますが、現在(2017年の時点で)「日本のコンビニエンスストアや飲食店で目にする外国人店員」は主にアルバイトの私費外国人留学生で、外国人技能実習生はコンビニエンスストアや飲食店で運営や接客はしていません(そのようなことがあり、アルバイトのベトナム人私費留学生の活用にも熱心な(ようである)ローソンの社長が、外国人技能実習生の職種にコンビニエンスストアの運営業務を加えるように主張しているのだろう、と推測しています)。

 当社/当センターのほうでは、コンビニ各社がむりやりにでも24時間営業を継続させたいために外国人留学生のアルバイトを動員してがんばらせているというような現状が日本の大都市の一部ではあるようだと聞いていて、そのような状況を懸念しています。コンビニエンスストアでアルバイトする外国人私費留学生をさらに増やすというようなことをする以前に、そもそもコンビニエンスストアの24時間営業を維持するのを止めればいいのではないか、特に深夜帯の利用者が少ない店舗の24時間営業に合理性はあるのだろうか、と思うのですが、そのようなことを申し上げると、コンビニ業界関係者の方々には非常に煙たがられるようで、残念に思っています。

4. 「コンビニの店員に外国人技能実習生」の次は「飲食店の店員に外国人技能実習生」?

 申しわけありません、要確認情報なのですが、数年前にある技能実習業界関係者の方からお聞きしたお話によると、日本の飲食店業界の有力関係者の方々の一部は技能実習生を外食産業でも実習させることができるよう制度改正を働きかけているようだ、とのことのようです。

 仮にコンビニの店員として技能実習生を実習させることが実現したとしたら、おそらくその次は飲食店の店員として技能実習生を実習させるという流れになるのではないでしょうか。

 日本の外食業界、外食大手チェーン店はそのような見込み(?計画?)を実現させることを視野に入れ始めているのではないか、と推測しています。

5. 厚生労働省法務省が掲げている技能実習制度の建前論で乗り切れるのか?

 日本の技能実習制度の建前が破綻しているのではないか、ということは少なからぬ技能実習業界関係者も言っているようであると聞いていますが、前にも述べているように、厚生労働省法務省は外国人実習生は「実習」を行っているのであり「労働」ではないという建前論を依然として固持しているようです。

 数年後になるのか十数年後になるのかよくわかりませんが、仮にほんとうにコンビニエンスストアの店員や飲食店の店員として外国人技能実習生を「実習」させる法律ができて、実際に外国人技能実習生が「実習」しているのが日常風景になったとしても、日本の厚生労働省法務省は依然として(半ば以上空理空論と承知しつつも)日本の技能実習制度の建前としての実習の意義を繰り返し説き、人手不足が要因ではない、と白々しく説明を行っているのかもしれません。

 ご参考までに、厚生労働省法務省が掲げている技能実習制度の建前論に関しては、当社/当センターのブログ、以前のエントリーでも取り上げている朝日新聞の記事、

http://www.asahi.com/articles/DA3S13236259.html
「技能」海渡らぬ現実

http://www.asahi.com/articles/DA3S13236212.html
技能実習」建前に限界 帰国者大半、関係ない職

では、日本とベトナム両国の技能実習業界関係者の方々から技能実習制度は発展途上国への技術移転が建前であるもののベトナムでは帰国後に日本での「実習」がいかされていないケースが大半ではないかというコメントを引き出し、技能実習生の来日用件を満たすために実習生(候補)の経歴詐欺が常態化、極端な場合は実習生(候補)の経歴詐欺のために架空会社を設立することまで行われているようだ、ということが報じられています。

 また、昨年(2016年11月)の読売新聞にも、「外泊の『罰金』50万円 過酷労働「来日を後悔」」という記事や「8ヵ月殻むきばかり 技術習得『計画は名目』」という記事のような技能実習制度の意義や建前論を本質的に疑問視する記事が掲載されたようです(が、内容が濃い良質な記事にもかかわらず、読売新聞のウェブサイトには見当たりませんでした(該当する記事の情報をご存知の方(々)がいらっしゃいましたら、ご教示いただけませんか)。

 大手新聞の一部の先鋭的で本質的な問題提起とは比較して、先日放映された「ガイアの夜明け」の番組もそうですし、先日の「ガイアの夜明け」に限った話ではないのでしょうが、建前と実態が乖離し過ぎてわかりにくく複雑な技能実習制度をテレビ番組で取り上げ本質に迫るのは相当難しいのかもしれない、ということも感じさせられています。

6. 日本のテレビ番組や新聞が技能実習制度や私費留学制度を扱う難しさ

 余談になりますが、日本の私費留学制度も大きな制度的、実務的な問題を抱えているようで、特にベトナム人私費留学生の問題に関しては先日のNHK

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4073/index.html
「追いつめられる留学生 〜ベトナム人犯罪“急増”の裏側で〜」

という番組で取り上げられていました。その番組そのものは大きな反響を呼び、当社/当センターも問題提起としては有意義だったのではないかと判断し、下記のエントリー、

http://d.hatena.ne.jp/anhsao/20171207/
2017年12月5日NHKクローズアップ現代+ベトナム人私費留学生をめぐる問題が取り上げられたようです

で好意的な評価をしたのですが、後日、そのエントリーをご覧になったというNHKの番組制作者の方から様々なご質問をいただくことになってしまいました。大変失礼なご指摘かとは存じますが、そのNHKの制作関係者の方から(当社/当センターにとって)相当失礼な質問までされたことで不愉快な思いをさせられてしまい、また、番組で取り上げた日本の私費留学の問題点に関しても十分ご理解されていないのではないかと見受けられる点も少なからずあり、相当がっかりさせられた、ということがありました。

 もっとも、建前と実態が乖離していて必要以上にわかりにくく複雑になっているという点に関しては、技能実習制度も私費留学制度も相当類似していると言えなくもないように思われます。わかりやすさを優先させなければならないことが使命であろうテレビ番組や新聞の記事では、特に取り上げるのが難しいテーマなのかもしれず、それにもかかわらず、技能実習生の問題や私費留学生の問題を取り上げられてこられた関係者の方々に敬意を表したいと思っています。

7. 外国人技能実習生やアルバイトの外国人私費留学生の活用を考えることと同時に取り組んでみたほうがいいことは?

 以前、日本の人材紹介派遣業界の方々に、外国人の活用を考えるのと同時に、リストラされた中高年管理職の方々や就職氷河期世代で正社員になれなかった方々、家事手伝いでずっときてしまった方々の雇用や活用も考えてみてはいかがですか、とご提案したことがあったのですが、苦虫を噛み潰したような表情で舌打ちされてしまっただけでした。

 今後、当社/当センターのほうでは、日本の主に東京都内、神奈川県の川崎市横浜市などで、日本での日越通訳サービス・日越翻訳サービス、日本人の方々を対象としたベトナム語クラス、ベトナム語レッスンの場のご提供とともに、ベトナム人私費留学生の方々をはじめとする日本に比較的長期滞在、在住されるベトナム人の方々との交流や支援の活動を行うことを検討しているのですが、本来は氷河期世代の日本人の方々のサポートをするほうがはるかに重要で有意義なことなのだろうと考えています。しかし、当社/当センターには荷が重い業務かと思われるので、当社/当センターはやれることをやります。

 以前のエントリーの末尾に書いたことの繰り返しになってしまうのですが、もし篤志家の方々や有志の方々、ベトナム人にかぎらず外国人留学生を支援、応援されたいという方々からご支援いただけるようでしたら、ベトナム人私費留学生の方々との交流や支援の活動の件も検討だけで終わらずに実現に踏み出せるかもしれません。もしご興味、ご関心をお持ちの方々がいらっしゃいましたら、当社/当センターのEmail:anhsaoinfo@gmail.comへご連絡いただければありがたく存じます。よろしくお願い申し上げます。

 当エントリーが日本やベトナムベトナム人技能実習生やベトナム人私費留学生のことにご関心やご興味をお持ちの方々、テレビ東京の2017年12月12日放映の「ガイアの夜明け」の番組をご覧になった視聴者の方々、番組の制作に関わった方々のご参考になれば幸いです。

 よろしくお願いいたします。

当社/当センターまでご連絡、お問い合わせください

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。

 ご連絡は当社/当センターのEmail:anhsaoinfo@gmail.comまでよろしくお願いいたします。