日本語ができるベトナム人技術者は日本のIT技術者不足をカバーできるほどいないのでは?

 Anh Sao Co.,ltd(アンサオ)/のぞみ日本語センターです。ベトナムの首都ハノイベトナム北部で翻訳・通訳、コンサルティング・リサーチ、教育・研修等のサービスをご提供しています。

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。よろしくお願いいたします。

日本語ができるベトナム人技術者は日本のIT技術者不足をカバーできるほどいないのでは?

 昨年も同じようなことを書いた気がしておりますが、ベトナムハノイは7月下旬に入り、蒸し暑さもやわらぎ多少は過ごしやすくなってきたように感じております。当社/当センターのブログをお読みいただいているみなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 NHKの「Business特集」というウェブサイトの今日(2015年7月27日)の特集で、「解消できるか? IT技術者不足」というタイトルで日本のIT技術者不足が取り上げられ、その関連でベトナムIT技術者のことが触れられているようです。下記のURLです。

http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2015_0727.html
解消できるか? IT技術者不足

 NHKニュースがIT技術者不足を取り上げた主旨とやや異なる点ではあるのですが、日本語でコミュニケーションできるベトナム人技術者に関して取り上げられている内容や視点(の一部)に実態とかけ離れているように思われる点があったため、違和感を感じてしまいました。

 上記の記事でベトナム技術者に関して取り上げられた箇所、小見出しは「国をあげた人材育成に取り組むベトナム」とあります。下記に該当箇所を引用させていただきます。

国をあげた人材育成に取り組むベトナム

 なぜ、今、ベトナムが注目を浴びるのか。その理由は国をあげたIT技術者の育成にあります。大学には、実践的なコンピューターのプログラミングを学ぶコースが設けられ、即戦力となる人材を数多く輩出しています。
 さらにITと日本語を同時に専攻できる大学もあり、日本語ができるIT技術者が次々と育成されているのです。実際、日本で働くベトナムのIT技術者などの数は、この2年でおよそ2倍に増えており、去年はじめて1000人を超えました。
 こうしたなかベトナムのIT企業も日本の技術者不足をビジネスチャンスと捉え、攻勢をかけています。その一つがベトナム最大手のIT企業、「FPTソフトウェア」です。この会社の社員数は7500人。すでに200社を超える日本企業のシステム開発を請け負っていますが、さらに日本市場での売り上げを伸ばそうと、次なる一手を打ちました。
 「2018年までに日本語ができるIT技術者を1万人育成する」という計画です。すでに社内の優秀な技術者を選んで、5か月から9か月の間、業務として日本語を学ばせています。

とのこと、大変失礼なご指摘で申しわけありませんが、日本語でコミュニケーションできるベトナム人IT技術者の養成を取り上げた箇所に関しては、NHKの記者の方の解説は不十分なのではないかと思われました。そして、件のベトナム大手IT企業関係者の方々には失礼なご指摘ですみませんが、当社/当センターがベトナムにいらっしゃる日本語教育関係者の方々やIT業界の関係者の方々からお聞きしたかぎりでは、上記のような威勢の良い話が出てくるような状況とは思えませんでした。

 当社/当センターは、上記の記事が取り上げていないことを2つほどご紹介したいと思っております。1点目はベトナム最大手IT企業では自社(のグループ企業)が設立した大学で日本語教育が行われている(ようだ)が、あまりうまくいっていないようであることです。2点目はハノイ工科大学で行われているIT技術者養成プロジェクトに関する情報です。

1. ベトナム最大手IT企業が自社(のグループ企業)で設立した大学に関して

 当社/当センターが知りかぎりでは、上記のベトナム最大手IT企業はハノイ郊外に自社(のグループ企業)が設立した大学を持ち、日本語教育も行われているようなのですが、学生の日本語能力を十分に向上させることや良い日本語教師の確保に成功しておらず、順調とは言い難い状況にあるようだと聞いております。自社が設立した大学の日本語教育をレベルアップされることは成功しているとは言い難い状況にあるため、2015年4月5日のNHK記事(下記リンク先の記事はすでに削除されているようですが)、

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150404/k10010038361000.html

にあるように、『経済産業省によりますと、ベトナムのIT企業が、ことしから3年間で5000人の技術者を日本語学校へ留学させることを検討する』ということを計画されている(されていた?)ようです。

 上記の記事にあるように日本の日本語学校に留学させる場合、その費用はどこが負担することになるのでしょうか。日本語学校に留学させる費用等に関して、ベトナム最大手IT企業がその費用等の大半を負担されるということでしたら、自社事業として行われるのでしょうから、大したものだと思います。ただ、ベトナム社内の日本語教育は件のベトナム最大手IT企業の負担もあるが、日本での日本語教育費用に関しては日本側のほうで負担することになる可能性があるというようなことを聞いております。日本での日本語学習費用は日本の受け入れ企業が負担されるのかもしれないということ、または、日本国の税金が一定の金額投入されるプロジェクトになるかもしれないということ、両方の可能性があるというようなことを聞いております。もし日本国の税金が投入されるプロジェクトになるようでしたら、件のベトナムの大手IT企業に特別に利することになるのではないかということを心配しております。

 実は上記のベトナム最大手IT企業の社員の日本語教育に関しては、今春(2015年春)日本から調査のために日本の会社の方々がいらっしゃって、当社/当センターはヒヤリングを受けました。「ベトナム大手IT企業から自社社員(候補)を日本へ留学させるプログラムのことで相談を受けている」ということでしたが、その日本人関係者の方々はそのベトナム大手IT企業が設立した大学があることも、その大学で日本語教育が行われている(ようである)ことも把握されておらず、そのことには大変驚かされました。当社/当センターのほうでは、そのベトナム大手IT企業が設立した大学を視察され、どのような日本語教育が行われているのか把握されることをおすすめしました(ですが、その後、ご連絡をいただいていないので、実際に視察されたのかどうかということ、どうご判断されたのかということは存じません)。

2. ハノイ工科大学で行われているIT技術者養成プロジェクト

 上記の記事では取り上げられていない(か、『ITと日本語を同時に専攻できる大学もあり、、』という申しわけ程度の言及で済まされている)ようですが、ハノイ工科大学で実施されているITSS教育能力強化プロジェクト(通称「HEDSPI」)というIT高等教育人材育成プログラムは、日越両国のIT人材育成プロジェクトとして有名で、日本語でコミュニケーションできる有能なIT技術者を育成するプロジェクトして高く評価されているようです(ただし、プロジェクトの評価に関しては異なるご見解、ご意見もあるようです)。

 しかし、先日、そのプロジェクトに関わっていらっしゃった元関係者の方々にお聞きしたところ、2015年現在延長されたプロジェクトが継続中とのことですが、2014年以降は、その機関で教えられていた日本語教師の方々が多数辞められて、IT関連の専門教育を担当されていた日本人の方も辞められ、学生の日本語教育には多大な影響が出ているようで残念である、ということをお聞きしております。

 なお、上記でご紹介した「HEDSPI」というプロジェクトに関してWWWにまとめられている情報もあり、ご参考になるのではないかと思われます。ご関心をお持ちの方々、下記の関連情報のリンク先をご参照いただければ幸いです。

今回のエントリーのまとめ

 長々と細かいことを述べてしまい、大変すみません、まとめです。

 ベトナム人IT技術者に大きな期待をお持ちの日本IT企業の方々には申しわけないのですが、ITの技術をきちんと理解し、それなり以上の実務能力(、または、潜在的な実務能力)を有し、日本語もそれなり以上のレベル(日本語能力試験でN2〜N3相当)に達しているベトナム人学生、ベトナム人技術者は、けっして多いとは言えず、日本のIT技術者不足をカバーできるほどではないということは言えるのではないかと思われます。ベトナムでのIT専攻の学生、ベトナム人IT技術者への日本語教育が現時点では質・量ともかなり限られたものであることが要因の1つとして挙げられるのではないかと思われます。

 日本のIT企業がベトナム人技術者とプロジェクトチームを組むときに、日本語でプロジェクトを運用しないといけないいう制約がないようでしたら、英語でプロジェクトを運用することを検討されるとよろしいかもしれません。英語で運用するプロジェクトあれば、プロジェクトに参加できるベトナム人技術者もたくさんいるでしょうし、日本人技術者にとっても、今後、ベトナム以外の国や地域でプロジェクトを進めるための良い経験が得られるのではないかと思われます。

 当エントリーが日本やベトナムでIT関連事業に関わる方々のご参考になれば幸いです。 

関連情報

http://fpt.edu.vn/
FPT大学

 以下、HEDSPIプロジェクト関連の関連情報をご紹介します。

http://www.jica.go.jp/project/vietnam/0601790/
ハノイ工科大学ITSS教育能力強化プロジェクト

http://r-cube.ritsumei.ac.jp/bitstream/10367/3343/1/uas7_goba.pdf
ベトナム国ハノイ工科大学ITSS教育能力強化プロジェクト」の事業報告

http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~yasuko/multim/mul20080913.html
ハノイ工科大学におけるHEDSPIプロジェクトの概要と課題

http://www.hust.edu.vn/
ハノイ工科大学

当社/当センターまでお気軽にご連絡、お問い合わせください

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。

 ご連絡は当社/当センターのEmail:anhsaoinfo@gmail.comへよろしくお願いいたします。

 今後とも当社/当センターをよろしくお願いいたします。