日本での介護職を希望するベトナム人留学生受け入れの際注意すべきことは?(その2)

 Anh Sao Co.,ltd(アンサオ)/のぞみ日本語センターです。ベトナムの首都ハノイベトナム北部で翻訳・通訳、コンサルティング・リサーチ、教育・研修等のサービスをご提供しています。

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日本での介護職を希望するベトナム人留学生受け入れの際注意すべきことは?(その2)

1. 介護職を希望するベトナム人留学生(候補)受け入れ、日本の日本語学校や介護養成校の学費減免プログラムのメリットは?

 最近、日本の介護業界の方々、介護養成校の方々や日本語学校の方々、日本とベトナムの介護職ベトナム人養成プロジェクトに関わっていらっしゃる方々にお会いしてお話をお聞きする機会、Eメールやツイッターフェイスブック等を通じて情報交換や意見交換をさせていただくことが徐々に増えてまいりました。

 日本やベトナムで様々な立場の様々な方々からお話をお聞きしている中で、現時点(2018年2月中旬の時点)で、日本での介護職を希望するベトナム人を受け入れるために、日本の介護施設、または、介護関連事業を行う会社や団体が、介護職希望のベトナム人留学希望者、ベトナム人留学生が特定の介護施設で就職することを見込み、日本語学校と専門学校の学費を全額、または、一部負担する(ことを予定する)介護養成関連プロジェクトが相当数行われている(行われる)ようです。ほとんどの場合、その留学生の雇用を見込む特定の介護施設やその介護施設の関連会社・関連団体が学費を負担している(負担する)ようです。

 現時点で、当社/当センターのほうでは、そのような学費減免型の日越介護職ベトナム人養成プロジェクトは、次に挙げるようなメリットがあるのではないかと判断しています。

 日本での介護職就職を希望する多くのベトナム人留学希望者、多くのベトナム人留学生にとって相当大きな負担になるであると思われる経済的負担を減らすことができるため、介護職を希望するベトナム人には相当大きなメリットがあるのではないかと思われます。また、日本の介護施設にとっても相応の費用や期間、労力はかかるものの介護の専門知識を持つベトナム人をそれなり以上の高確率で雇用することができる(可能性がある)というメリットがあるように考えられます。日本の介護養成校や日本語学校にとっても、外国人留学生を受け入れることで学校経営を安定させることができ、かつ、それほど無理がない形でそれなり以上(、あるいは、そこそこ以上)の学習意欲や学習能力を有する留学生を受け入れることができるというメリットがあるのではないかと考えられます。

2. 介護職を希望するベトナム人留学生(候補)受け入れ、日本の日本語学校や介護養成校の学費減免プログラム、うまくいかなかった場合は?

 上記に挙げたようなメリットがあり、「もしうまくいけば、三方良しである」という一見すると相当(?それなりに?)魅力的なプロジェクトではないかと思われるのですが、日本とベトナムの介護職ベトナム人養成プロジェクトに関わっていらっしゃる方々は、予定通りに事が運ばなかった場合、うまくいかなかった場合のことをどのぐらいご想定されているのでしょうか。

 一例ですが、学費を減免されたベトナム人留学生が在学中に就職先や進学先を介護職以外の仕事に変更したというようなケースに対してはどうご対応されるのでしょうか。もう一例は、学費を減免されたベトナム人留学生がその学費を負担した介護施設に就職したものの比較的短期間で転職、離職して他の(より良い待遇や給料を約束する)介護施設で職を得るというようなケースもあり得るのではないかと思われますが、どのようにご対応されるのでしょうか。
 ( ご参考までに、上記のようなケースは、ベトナム人留学生に限られるわけではなく、他国の介護職希望の留学生受け入れに関しても、よく考えておかなければならないのではないかと存じます。)

 現時点で当社/当センターが知り得た範囲では、日本の介護施設関係者の方々や介護関連事業を行う会社や団体の方々で日越介護職養成プロジェクトに関わられている少なからぬ方々が、日本に来てから数年後に学業半ばで意思や志望を変更した外国人留学生、または、短期間に転職や離職をした介護職の外国人がいた場合に、負担した学費等の返還を求めることを考えられているようです。しかしながら、そのようなお考えは正しいのでしょうか、日本の法律で認められるのでしょうか。

 現時点で当社/当センターが知っている範囲でも、ベトナムではそのあたりのことをよく考えられていない(ようである)日本側の要請でベトナム側が介護職の留学希望者を募集し日本語教育がスタートしているところや介護職を希望するベトナム人が留学生として実際に来日しているところが複数あるようで、当社/当センターのほうでは、日本側ではベトナム人留学生が意思変更した場合等に学費等の返還を要求することを安易に想定されている(ようである)ようで、そのことが後々になって大きなトラブルや事件になるのではないか、と懸念しています。

3. 介護職を希望する外国人人留学生(候補)受け入れ、日本の日本語学校や介護養成校の学費減免プログラム、費用返還を迫るのは訴訟に負けるリスクを負うことになるのでは?

 当社/当センターも詳しいことを把握しているわけではありませんが、そのような問題に関して、朝日新聞の下記の記事
https://www.asahi.com/articles/ASK984DS2K98UBQU00W.html
看護師「お礼奉公」、2審も学費返還不要の判決
で取り上げられている日本人の看護師へのお礼奉公の是非を問う判例が参考になるのではないかと考えています。

 上記の記事によると、『病院を運営する法人から看護学校の学費を貸し付けてもらう代わりに、その病院で一定期間働く「お礼奉公」の内容の是非をめぐる控訴審判決が6日、広島高裁であった。生野考司裁判長は「約束の勤務期間を守らず退職した看護師は学費の返還義務がある」とした病院側の訴えを棄却した』とあり、労働基準法14条と労働基準法16条に反していることが指摘されています。また、『「病院側の規定が実質的には経済的足止め策として退職の自由を不当に制限するものだったといわざるを得ない」と結論づけた』ということも指摘されているようです。

 その判例から考えますに、日本では学費の返還を強要すること等はたとえ外国人留学生(ベトナム人留学生を含みます)であっても(日本人と同様に)職業選択の自由や退職の自由を不当に制限するものと解釈される可能性が高いのではないかと思っております。日越介護職養成プロジェクトに関わられている方々、いかがお考えでしょうか。

 当社/当センターは日本の介護施設が介護職希望のベトナム人留学生の日本語学校と介護の専門学校の学費を全額負担するプロジェクト関係者の方々とご面識があり、1年に数回情報交換、意見交換をさせていただいているのですが、そのプロジェクトでベトナム人留学生が在学中に就職先を介護職以外の仕事に変更した場合や介護と無関係の専攻の大学や専門学校に進学した場合、学費を負担した介護施設に就職したものの短期間で転職した等の場合にどうなるのかはわかりかねておりますし、日本側の関係者の方々もその問題に関しては口が重いようです。

 現時点で、当社/当センターは、そのような場合は、当人の意向を尊重しないわけにはいかず、その結果として、学費を負担した介護施設や団体の関係者の方々、介護養成校の関係者の方々はおもしろくない思いをされるのではないだろうか、と推測しています。

 前述のように、日本の介護施設関係者の方々や介護関連事業を行う会社や団体の方々で日越介護職養成プロジェクトに関わられている少なからぬ方々が、日本に来てから数年後に学業半ばで意志変更した外国人留学生、または、離職した介護職の外国人がいた場合に、負担した学費等の返還を求めることを考えられているようですが、現時点で、当社/当センターは、上述の判例にあるように、介護施設側や介護関連事業を行う会社・団体側が負担した学費等の返還を迫った場合、訴訟を起こしたとしても負ける可能性が相当高いのではないかと思っておりますし、外国人留学生や外国人スタッフから逆に学費の返還が違法だという訴訟を起こされて敗訴する可能性もけっして低くないのではないかと判断しております。

4. 介護職を希望する外国人人留学生(候補)受け入れ、日本の日本語学校や介護養成校の学費減免プログラム、成功させるためにはきちんと地道にやっていくしかないのでは?

 介護職を希望する外国人人留学生(候補)受け入れで日本の日本語学校や介護養成校の学費減免プログラムを行うにせよ行わないにせよ、結局、うまく軌道に乗せて成功させるためには、きちんと地道にやるべきことをやっていくしかないのではないか、と思われます。

 より具体的には、日本語学校や介護養成校の学費を負担した、奨学金を付与した外国人留学生や外国人スタッフに長期間主体的に働いてもらえるように、多少費用や手間はかかったとしても、ベトナム(や現地)でのベトナム語(や現地の受け入れ国、地域の母語)による説明と周知を十分に行いきちんと日本語学習の基礎ができていることを見定めてから受け入れること、日本でも説明責任を果たししっかりとした教育を行うこと(時と場合により、留学生の出身国、出身地域の言語による翻訳文書配布を行い説明すること、通訳者が介在するミーティングを行い質疑応答に応じること等も必要ではないかと存じます)、日本の介護施設の受け入れ環境を整備して良好な待遇、給料で雇用すること、3点に最善を尽くされるほうがよいのではないかと考えています。

 そのことに加え、現在日本の介護施設で介護職に従事されている日本人の方々や介護福祉士(候補)の外国人の方々により良い待遇や給料を保障し職場環境を良好な状態に改善していく取り組みを行う等のことも重要なのではないでしょうか。

 当エントリーをお読みいただいている方々、いかがでしょうか。


 大変すみません、当エントリーは、当社/当センターが2018年2月中旬の時点までに収集した情報にもとづき、まとめています。もしかしたら日本の介護業界の関係者の方々、介護養成校関係者の方々からすれば、苦々しく思われる点があるかもしれませんが、もしそのようにお感じになられたということでしたら、大変申しわけありません。

 当エントリーをお読みいただいてご指摘やご意見、ご質問等ございましたら、当社/当センターのほうまでお問い合わせ、ご連絡いただけないでしょうか。
お問い合わせ、ご連絡は、当社/当センターのEmailアドレス:anhsaoinfo@gmail.comまでお願いいたします。

 当エントリーが、日本で介護職に就くことを希望するベトナム人留学生の受け入れを行っている方々、今後受け入れようとお考えになっている方々、日本の介護業界の関係者の方々、学校関係者の方々のご参考になれば、幸いに存じます。

 よろしくお願い申し上げます。

関連情報

http://d.hatena.ne.jp/anhsao/20170418
日本での介護職を希望するベトナム人留学生受け入れの際注意すべきことは?

http://www.anhsao.org/AnhSaoNozomi_KaigonoNihongo.html
日本で介護職に就くことを希望するベトナム人留学生(候補)、介護職のベトナム人技能実習生への日本語サポート、関連サポート

https://www.asahi.com/articles/ASK984DS2K98UBQU00W.html
看護師「お礼奉公」、2審も学費返還不要の判決

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 ご連絡は当社/当センターのEmail:anhsaoinfo@gmail.comへよろしくお願いいたします。

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