「国際貧困ビジネス」としての日本の日本語学校経営に関する一考察

 Anh Sao Co.,ltd(アンサオ)/のぞみ日本語センターです。ベトナムの首都ハノイベトナム北部で翻訳・通訳、コンサルティング・リサーチ、教育・研修等のサービスをご提供しています。

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。よろしくお願いいたします。

「国際貧困ビジネス」としての日本の日本語学校経営に関する一考察

 大変すみません、当社/当センターのウェブサイトの

http://anhsao.org/AnhSaoNozomi_Nihonryuugaku.html
ベトナムでの日本留学関連事業

にありますように、当社/当センターでも小規模ではあるものの日本留学関連事業を続けているもので、非常に申し上げにくいことではあるのですが、最近複数の日本語学校教職員の方々や元教職員の方々にご教示いただき、留学資金も十分ではなく、学習意欲、日本語能力にも欠ける留学生をあえて積極的に受け入れる日本語学校が存在していることを知らされました。

 現在(2016年の時点で)、日本の中心的な大都市にも地方都市にも、日本における日本語学校の設立・運営・経営の理念や理想、目的に反し、留学資金が十分あり学習意欲を持つ留学生の受け入れに消極的である一方、留学資金、経費支弁能力がギリギリかカツカツ、かつ、あまり学習意欲、日本語能力がない留学生を積極的に多人数受け入れている日本語学校が存在しているようです。

 現時点(2016年4月の時点)で当社/当センターが知り得た範囲では、十数校の日本語学校が該当するようであり、実数はおそらくその数倍はあるもののと推測しております。

 留学資金はギリギリ、日本語能力、学習意欲もない外国人留学生を積極的に受け入れる日本語学校が存在する原因としては、どのようなことが考えられるでしょうか。当エントリーでは、当社/当センターの現時点での見解、意見をまとめてみたいと思っております。

 最初に、そのような日本語学校はどのような特徴があるのかリストアップしてみました。下記のようなことが挙げられるのではないかと思われます。

  1. 現時点(2016年4月の時点)では、在籍している外国人留学生の国籍別割合でベトナム人留学生やネパール人留学生などの割合が極めて高いようであること(ベトナム人留学生が在籍している留学生の8割前後を占め数百人在籍しているところ、ネパール人留学生が200人前後在籍していたところ等があるようです。)
  2. そのような日本語学校に在籍している外国人留学生の日本語能力、学習意欲はそれほど高くなく、留学生は日本語学校での日本語学習でどのぐらい日本語能力を向上させられるかということより、アルバイトでいくら稼げるか、アルバイトでいくら稼げたのか、ということに関心が高いようであること
  3. そのような日本語学校に在籍している外国人留学生は、日本国の法律で資格外活動として認められている時間の制限を超過してアルバイトせざるをえない(ことが多い)ようであり、日本語学校の経営者や教職員はそのような実情を知りつつも黙認しているケースが大多数のようであること
  4. そのような日本語学校に在籍している外国人留学生は、日本語学校で日本語学習することでそれほど日本語能力を向上させられず、(建前上はともかく、実質的には)学費を払ってくれれば誰でも受け入れてくれる専門学校や大学に進学するはめになるケースが比較的多いようであること(人により、置かれた環境により、日本で生活していることやアルバイトをすることで、話すことや聞くことは相当上手になるようですが、そのような留学生でも全般的に漢字・語彙・文法が弱く、日本語能力試験や留学試験で高い点数が取れず、不本意な進学をせざるをえなくなることが多いようです)
  5. そのような日本語学校を卒業した外国人留学生でそれなりかそれなり以上の専門学校や大学に進学できた人でも、日本語学校で日本語能力を向上させられなかったことが大きな弱点となり、日本語能力がそれほど高くないということ、専門性を十分身につけられていないということで、日本での就職活動、ベトナムに帰ってからの就職活動・求職活動で相当不利な立場に立たされるようであること
  6. (そのような日本語学校の中でも一部の学校ではないかと思われるのですが、)日本語学校側が在籍している外国人留学生にパスポート等を強制的に(、または、半強制的に?)預けさせているというような法令上すべきではないことまで行い留学生を管理しようとしている学校さえあるようであること
  7. そのような日本語学校の教職員の職場環境や待遇はそれほど良いものではなく、教職員が半ば強制的にサービス残業をさせられるところも少なくはないようであること(そのような学校では、法定上の時間を超過して違法アルバイトをしている留学生のアルバイトで得る月給が、専任講師やフルタイム職にある職員の給与を超えることもめずらしくないようです。)
  8. そのような日本語学校にもそれほど多くはないものの、まじめな教職員はいらっしゃるようで、まじめな教職員には過大な負担が押し付けられ、多大な心労がかかってしまうことで病気になってしてしまう人もいるようであること
  9. そのような日本語学校の学校経営者は、上記のような現状を(すべて?半ば?)知りつつも、過度な利益追求主義、または、自己保身策、自校の延命策のためか、可能なかぎり、現状維持に努めようとしているようであること

 当社/当センターのほうでは、多くの日本の日本語学校が掲げている理念や理想、目的から敷衍して、日本語学校は、留学資金が十分あり勉強する目的がはっきりしている留学生、まじめに授業を受け宿題だけではなく自主的に予習、復習する留学生を歓迎するものだ、と考えておりました。しかし、それとはほぼ正反対の考えを持ち、ある意味極めてイージーな手法を実際に実行に移している日本語学校経営者がいるようであることに驚かされました。

 それにしても、学校経営者にとっては安易ではある反面、利益を確保できるという実利もあるのでしょうけれど、まじめな教職員の方々にとっては(大げさかもしれませんが)生き地獄のような職場環境なのではないでしょうか。そのような学校に勤務されていて尽力されている教職員の方々のご苦労、ご心労をお察しいたします。

本来の理念、目的に反した日本語学校が存在する原因の考察

 繰り返しになってしまいますが、当社/当センターでは、日本の日本語学校は、留学資金が十分あり、勉強する目的がはっきりしていて、まじめに授業を受け、宿題も予習、復習もきちんとする留学生を歓迎するものだ、と考えておりました。

 しかし、一部の日本語学校は、十分な経費支弁能力があり学習意欲がある留学生の受け入れにはむしろ消極的で、十分な経費支弁能力がなく学習意欲もあまりない留学生を多人数受け入れることで、経営的に延命、サバイバルをはかろうとしているようです。

 それでは、どうしてそのような日本語学校の経営者はある意味安易な手法に頼るのでしょうか。言い換えますと、どうしてそのような日本語学校の経営者は、十分な経費支弁能力があり学習意欲がある留学生の受け入れを避け(?渋り?)、経費支弁能力も学習意欲も日本語能力もギリギリ、カツカツの外国人留学生を積極的に受け入れようとするのでしょうか。

 最も大きな原因として挙げられることとしては、2011年の東日本大震災後、それまでの台湾と韓国両国からの留学生が急減したことにより(東日本大震災直後は中国からの留学生も一時期急減、ただし、その翌年、翌々年以降は相当回復、その後も私費で日本語学校に留学する中国人留学生は減少はしていないようです)、多くの日本語学校が経営危機回避等のため(それほどの準備期間、移行期間を経ないで)ベトナムやネパールなどからの募集をスタート(、または、募集を再開)、なし崩し的にベトナム人留学生やネパール人留学生の受け入れを増やしていかざるをえない状況に追い込まれた、ということがあるようです。

 その後の変化として、そのような一部の日本語学校日本語学校では、多人数のあまりしっかりしていないベトナム人留学生やネパール人留学生を受け入れるほうが、経営者側視点では(教職員に相当大きな負担がかかることに対してそれほど配慮しなくてもよいなら)ある意味「やりやすい」ということに気づき、それが当たり前のようになり、きちんとしたレベルや意識が高い留学生の存在がかえって鬱陶しく感じられ、どちらかというと少数派になってしまった十分な経費支弁能力を持ち学習意欲もある留学生、先進国や中進国の留学生の受け入れには制限をかけるようになったのではないか、と推測しております。

 ベトナムから日本への私費での日本語学校留学の現状に関しては、昨年(2015年)のエントリー
http://d.hatena.ne.jp/anhsao/20150509
2015年、最近のベトナムからの日本留学の状況
の特に「3.最近数年のベトナム人の日本留学ブームの背景として考えられることは?」もご参照ください。

 それ以外の要因として考えられることとして、複数の日本語学校教職員の方々、元教職員の方々のご教示によると、学校内の事情もあるようです。そのような学校で、十分な留学資金があり学習意欲がある留学生を受け入れると授業内容や授業方法の改善等を要求されることが少なくないために(学校経営者側としてはその要求に対応することを負担に感じてしまい)やりにくいと思っているようである、とのことです。その一方で、十分な留学資金もなく、日本語能力も学習意欲もいまいちである留学生は、学校に対して改善要求やクレーム、文句を言うことは少ないようです。たとえ学校に対して要求や要望したいことがある場合でも、来日初期より日本での留学生活は実質アルバイト漬けになり、学校には出席率を確保するためにただ行っているだけになるという状況に陥りがちで、余裕がないために、改善要求やクレーム、文句を非常に言いにくい、言えない状況にあるのだろう、とのことです。

 その他のこととしては、同じ学校で留学資金も学習意欲も十分ある留学生と留学資金が十分ではなくあまり学習意欲もない留学生が同一クラスで授業を受けることになると、学習意欲が高い留学生から学習意欲が低い留学生への不満が高まり、クラスを分けてほしい等の要望が出されることもあるようで、留学生の不満に対応することに加え、実際にクラスを分けることで生じるコストの増加も負担になると思っているようである、とのことです。

 さらには、十分な留学資金があり学習意欲がある留学生は主に先進国、中進国からの留学生で短期留学であることが多いようで、長期留学が主であるベトナム人留学生やネパール人留学生より、留学生1人あたりが支払うトータルの学費が短期の留学であるために少ないということ、小回りの利いた対応が求められるということもあるようです。

 日本語学校を設立、運営、経営する理念や目的よりも、学校経営者側の視点からみた経営的にみた募集のやりやすさ、学校内管理の「見かけ上のやりやすさ」(あくまで見かけ上のやりやすさであり、実は教職員に多大な負担を押し付けないかぎり成立しないように思われますが)が重視されてしまったことによるものである、ととらえることも可能なのかもしれません。

「国際貧困ビジネス」と呼ぶのがふさわしいのでは?

 上記で取り上げてきた一部の日本語学校が行っていることは、言い換えるならば、外国人の留学希望者、外国人留学生をターゲットにした「貧困ビジネス」の1種である、とも言えるのではないでしょうか。あるいは、日本の他にベトナムやネパールなど複数の国を跨いで行われている「貧困ビジネス」なので、「国際貧困ビジネス」と呼ぶのがふさわしいのかもしれません。

 上記で取り上げたような日本語学校は、日本語学校が持つべき本来の教育理念や目的に大きく反しているのではないかと思われるのですが、大変残念なことに、外国人留学生をターゲットにした日本語教育事業を「国際貧困ビジネス」割り切ってやるようになってしまった(、または、一部の新規校、新設校では、当初から割り切ってやっている、というところもあるかもしれません)、ということなのではないのでしょうか。

 上記で取り上げたようなひどい日本語学校かどうかに関わらず、日本の日本語学校の関係者の方々は1年間60〜70万円前後の学費と割高な生活費を支払わせてまでベトナム人(やネパール人、その他の東南アジア諸国、南アジア諸国の人たち)を留学させる大義名分があるかということを自省すべきではないでしょうか。それとともに、ベトナム人留学希望者のみなさんも高額な学費と割高な生活費を支払ってまで日本留学する意義があるのかどうか自問したほうがよいのではないか、とあらためて思う次第です。

当社/当センターとしてどのように受け止めるべきか悩んでおります

 ベトナムの多くの日本留学会社/センターが経営偏重、金儲け主義で日本留学事業を行っている(ベトナムの日本留学会社/センターと言っても、すべてがすべてそうではありませんが)一方で、当社/当センターでは、下記のページ

http://anhsao.org/AnhSaoNozomi_Nihonryuugaku.html

にあるように、

  • 日本留学を希望するベトナム人とご家族の方々が学力的な面や経費的な面でそれほど無理なく日本へ留学することができ、「日本へ留学して良かった」と心から思っていただける可能性が比較的高いようであれば、当センターのほうでも日本留学をすすめるようにしております。
  • 日本でのアルバイトが日本留学の主な目的であるベトナム人はお断りしております。また、経費的な面や学力的な面等で日本留学する要件を満たしていないベトナム人には別の行き方、別の人生を歩んだほうがいいのではないかとアドバイスさせていただいております。
  • 当センターでは、ベトナム人留学希望者の経費支弁者に十分な資金がないにもかかわらず銀行預金証明サービスを利用する申請、偽造書類を利用する申請は行いません。

等々の方針で、ベトナム人留学希望者にとっても、日本語学校にとっても、良心的だと思っていただけるよう日本留学事業を行うようできるかぎり努力してきましたが、上記のようなひどい日本語学校の存在を知ってしまい、愕然とさせられました。

 それに加えて、非常に申し上げにくいことですが、けっして少なくはない日本語学校が、ベトナム人留学希望者の申請書類の一部が銀行預金証明サービスを利用している可能性が高いこと、もしくは、偽造書類である可能性が濃厚であることを半ば(?もしかしたら、半ば以上?)承知の上、または、黙認した上、確かめるべきことを確かめず知らぬ存ぜぬということで、申請を行っているようであること(がかなり多いこと)がわかり、大変残念に思っております。

 そのようなことが判明したということがあり、当社/当センターとして日本留学事業を続けていくのがほんとうによいのかどうか悩んでおります。日本留学事業を続けていくのがよいのかどうか、続けていくとしたらどのような形で続けていくのがよいのか再検討を行おうと思っておりますが、続けていくことになった場合、今までとは異なる形で、例えば、比較的良心的に運営・経営している日本語学校に対してサポートに徹すること、または、ベトナムで比較的良心的に(もし可能ならば、比較的良心的で日本語がそれなり以上にできる意欲的な人がやっている)日本留学会社、日本留学センターのサポートを専業とする、という形態に移行することを検討事項の1つとして考えております。

 日本の留学関連事業の関係者の方々、ベトナムベトナム人のことにご関心をお持ちの方々、お知恵の拝借、ご支援いただけるようでしたら、幸いです。
 何かございましたら、当社/当センターのEmailアドレス
Email:anhsaoinfo@gmail.com
までご連絡いただけないでしょうか。

 よろしくお願い申し上げます。

追記(2016年5月2日)

 申しわけありません、下記の関連情報でご紹介した日本語学校におけるネパール人学生の様相とその諸問題(PDFファイル)のリンク先を参照できない状態であったのを修正しました。大変失礼しました。よろしくお願いいたします。

関連情報

http://d.hatena.ne.jp/anhsao/20150509
2015年、最近のベトナムからの日本留学の状況

http://duhocnozomi.blogspot.jp/2016/01/hieu-truong-nhat-ngu-tinh-fukuoka-bi-bat.html
Nhà kinh doanh và hiệu trưởng trường tiếng Nhật ở tỉnh Fukuoka bị bắt/福岡県にある日本語学校の会長、経営者が逮捕されたようです

http://repository.seinan-gu.ac.jp/bitstream/handle/123456789/1093/glis-n9-p79-112-iwa.pdf
日本語学校におけるネパール人学生の様相とその諸問題(PDFファイル)
 大変すみません、当社/当センターは、ネパールからの私費日本留学の現状をそれほど詳しく把握しているわけではありません。ご存知の方々も多いことかとは思われますが、岩切朋彦さんという日本語教師の方が書かれた福岡県の日本語学校に在籍するネパール人留学生を取り巻く状況と問題点のレポートは大変参考になりました。

当社/当センターまでお気軽にご連絡、お問い合わせください

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。

 ご連絡は当社/当センターのEmail:anhsaoinfo@gmail.comへよろしくお願いいたします。

 今後とも当社/当センターをよろしくお願いいたします。